大判例

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京都地方裁判所 昭和28年(ワ)489号 判決

原告 堀幸造

被告 上西菊次

一、主  文

被告から原告に対する京都簡易裁判所昭和二六年(ユ)第一〇八号家屋明渡等調停事件の調停調書にもとずく強制執行はこれを許さない。

訴訟費用は被告の負担とする。

本件につき当裁判所が昭和二十八年四月二十二日になした強制執行停止決定はこれを認可する。

前項に限り仮に執行することができる。

二、事  実

原告は主文第一、二項同旨の判決を求め、その請求原因として次のように述べた。

「原告は別紙目録<省略>記載の家屋(但し表二階十二畳の事務室及び八畳の間を除く)を訴外大洋証券株式会社から賃借している。訴外会社は別紙目録記載の土地及び家屋を譲渡担保として被告より金百万円を借受けたが、期限に返済しなかつたため、被告は訴外会社を相手どり京都簡易裁判所に家屋明渡等調停を申立て、その結果昭和二十七年四月十一日主文第一項記載の調停が成立した。

ところで右調停調書中には、原告が利害関係人として参加し、被告に対し前記家屋を訴外会社が明渡すときは原告も同時にこれを明渡すことを承諾した旨の記載があるが、右は訴外堀幸一郎が訴外人に対する原告の委任状を偽造し原告の授権を得たかのように装つて本件調停に原告を参加させて調停を成立させたものであり、原告は右調停手続には何ら関与しておらず、全く訴外人の無権代理行為によるものである。又調停成立後原告が訴外人の無権代理行為を追認した事実もない。

従つて主文第一項記載の調停調書中原告に関する部分は無効であるから、その執行力の排除をもとめるため本訴に及んだ。」<立証省略>

被告は、

「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」

との判決をもとめ、答弁として次のように述べた。

「原告主張の日その主張のような調停が成立したこと及び調停調書中にその主張のような記載があることは認める。併しながら原告は右調停に際し、その実兄で別紙目録記載の家屋に同居中の訴外堀幸一郎を代理人に選任し訴外人は原告の委任状を裁判所に提出して利害関係人たる原告の代理人として調停手続に関与し、依つて原告主張の調停が成立したのであつて、訴外人の代理権には欠くるところはない。

仮に訴外人に原告を代理する権限がなかつたとしても原告は被告に対し昭和二十七年十一月四日本件調停調書にもとずく強制執行の猶予をもとめ訴外人の無権代理行為を追認したから訴外人の代理権限の欠缺は補正された。

従つていずれにしても本件調停調書は原告に対する部分においても有効であるから原告の請求は理由がない。

<立証省略>

三、理  由

被告が訴外大洋証券株式会社を相手方として家屋明渡等の調停を京都簡易裁判所に申立て、主文第一項記載の調停事件として係属したところ、訴外堀幸一郎が原告の代理人として同人に対する原告の委任状を提出し右調停手続に利害関係人たる原告の代理人として関与し、原告主張の調停が成立したことは当事者間に争がない。

被告は原告から訴外堀幸一郎に対する代理権の授与は正当になされたと主張するが、被告提出の証拠によつてもその事実を認めることができない。

却つて証人堀幸一郎の証言及び原被告各本人尋問の結果を綜合すると、右訴外人が原告の何らの授権を得ないのに勝手に有合せ印を押捺して原告名義の訴外人に対する委任状を作成して裁判所に提出し利害関係人たる原告の代理人たる資格で調停手続に関与した事実を認めることができる。

従つて本件調停は原告に関する限り代理人に対する授権を欠くものと言わなければならない。

そこで右無権代理行為の追認があつたかどうかを考えて見る。

およそ調停は当事者間に成立した合意を訴訟上一致して裁判所に対して、陳述する行為であつて、その法律上の性質は私法上の合意と訴訟行為との双方の要素性質を有するから調停における無権代理行為の追認も訴訟行為たる面においては裁判所に対する意思表示によつてこれをなすべきである。しかるに被告は原告が被告に対して追認したことのみを主張立証し、原告が裁判所に対して追認したことは何等主張立証しない。

それ故に本件調停が追認によつて遡つて効力を生じたとする被告の主張は採用できない。

そうだとすると主文第一項記載の調停調書中原告に関する部分は無効であると言うべくその執行力の排除をもとめる原告の請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、強制執行停止決定の認可とその仮執行の宣言につき同法第五百四十八条第一、二項をそれぞれ適用して主文のように判決する。

(裁判官 山田鷹夫)

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